2026年度(令和8年度)の北海道・札幌圏における高校入試は、「高校授業料の実質無償化」により大きな変化が起きました。
人気私立高の専願者の急増「専願ラッシュ」
2026年度より高校授業料支援の所得制限が撤廃され、支給上限額も年間最大約46万円(月額約3万8,000円)へと引き上げられました。今年度の入試では、かつて公立中堅校を志望していた層が私立への専願に切り替えたり、公立高校に合格しても入学を辞退して私立へ進学するケースが目立ちました。
札幌南高でさえも、今年度も辞退者が複数いて補欠合格者が出ました。また、難関高の手稲高校では辞退者が多く発生し定員割れとなったため2次募集がありました。
一方で、私立高校の中では立命館慶祥高校や北海高校などの付属高校の人気(入学希望者)が加速し、1月の推薦・専願入試で従来の入学者枠を埋めるぐらいの勢いでした。
立命館慶祥高校では、海外(帰国子女)・道外からの志望者が増加して、入学定員をオーバーして開学以来の最多入学者数となり、昨年度より入学者数が大幅に増えました。
また、これまではトップ高の滑り止めの位置付けであった第一高校では、教育内容・体制の変更、特待制度などの充実等により専願者が大幅に増加し、入学定員(400名)に対し約150人もオーバーして約550人の入学者数になりました。来年度以降は、第一高校はあくまでも滑り止めという考えではなくなっていくと思われます。
専願者急増の背景
大学附属校(立命館慶祥高校・北海高校・北海学園高校・北海道科学大学附属高校など)や、独自の進学プログラムを持つ私立進学校(第一高校など)において、専願志願者が前年比で大幅増加しています。
とりわけ、内部進学枠を持つ附属私立校の「コスパ」が評価されたことが窺えます。公立高進学による不透明な進路を避け、無償化の恩恵を受けられる附属私立で確実に3年後の進路を確保したいという受験生・保護者の心理が働いています。
公立難関高の進学校(旭丘、月寒、手稲など)は、依然として高い人気を誇りますが、その進学実態を分析すると保護者の不安が増し、大学付属校へ流れていると考えられます。
■MARCH・関関同立以上の壁
難関公立進学校(旭丘高・月寒高・手稲高)でも、現役での北大合格は上位1割、MARCH・関関同立・樽商は上位3割しかいけず、多くの生徒が進学するボリュームゾーンは北海学園大学や北海道科学大学です。これらは素晴らしい大学でありますが、「公立進学校に入り、さらに3年間努力した結果」、附属校からの内部進学者と同じ、あるいは推薦で下位の公立高の生徒に逆転されるケースが少なくありません。遠方の地方国立(北見工・室蘭工・弘前大など)で下宿代がかかるくらいなら、北海学園大学、北海道科学大学の選択をする人も少なくありません。
■塾・予備校費用の「見えないコスト」
公立高校は授業料こそ実質ゼロですが、大学受験対策のために塾や予備校に費やす必要が出てきます。高校受験と比べて大学受験の塾・予備校費は高く、月3万円と少なく仮定しても夏・冬の講習費を含めれば年間50万円以上が授業料以外にかかります。大学受験の塾・予備校費用はさらに上昇しています。一方で、私立高校は授業料無償化(上限45万7000円)により、家庭の持ち出しが激減しました。その浮いた資金を施設費や積立金に充てても、手厚い内部進学の私立の方と費用が殆ど変わりません。
難関公立高校に進学して大学受験の費用やストレスを抱え、結果として北海学園大学や科学大に進むのであれば、無償化の恩恵を受けて大学附属高校や推薦枠の多い私立高校に進学し、3年間を部活動や探究学習に充てながら、附属校進学や推薦で安定的に上位大学への道を確保するほうが、コストパフォーマンスが高いと判断する保護者も少なくないようです。大学進学という“保険”がある中で、安心して高校生活を送れる価値は、想像以上に大きいものです。
併願者の「私立選択」(公立高校辞退増加)
もう一つ、2026年入試を象徴する現象が「公立合格辞退」の増加です。従来、公立高校と私立高校を併願して両方に合格した場合、ほぼ100%近くの生徒が公立へと進んでいた。しかし、今年度は学費の差が実質的に解消されたことで、受験生と保護者は「どちらがより手厚い教育・施設で高校生活ができるか。大学進学に有利なのはどちらか。」という点で、進路を最終決定するようになり、公立高校の合格辞退者が増加しました。
■施設・ICT環境の充実
暑い夏に必要な冷房や快適な自習室。
■進学指導の密度
講習、放課後学習、進路アドバイザー(チューター制度)などの手厚いサポート。
■独自のカリキュラム
海外留学制度や、探究学習などの特色ある教育。
定員オーバーによる入試の難化
人気私立校では、専願者の増加に加えて、併願者の戻り(辞退者の減少)が重なり、入学者が定員を大幅に超過する事態が発生しました。ある高校では、臨時教員や教室を改修して座席を確保するなどの対応に追われています。
入学者がオーバーした私立高校は、補助金減額の危険性もあることから、次年度以降、合格ライン(ランクや当日点)が引き上げる動きになるおそれはあります。これにより、大学入試と同様に、人気の私立校に限りますが難易度が上昇するという連鎖反応が起きると見込まれます。
私立推薦・専願者の増加により、併願者の合格枠(入学枠)が減少することで、難易度(偏差値SS)が上昇することになっています。
公立高校にとっては、単に「公立であること」だけでは生徒を集められない時代が到来しました。私立校が提供するような魅力的な教育コンテンツや、老朽化した施設に冷房といったハード面の整備が急務となっています。
2026年の構造変化が示すのは、北海道・札幌圏内の高校受験が「学力に応じた自動的な振り分け」から「主体的な学校選択」へとフェーズが変わったということだと思います。
今後は、公立・私立の垣根を超えた学校間の「魅力競争」がさらに激化し、受験生にとって選択肢が増えることは喜ばしいですが、一方で、高校入試の偏差値や授業料だけで判断するのではなく、「3年後にどのような姿・大学進学になるか」を見極める高いリテラシーが、親子ともに求められる時代になったと言えるのではないでしょうか。
