北海道公立高校入試の平均点推移は、単なる「難しくなった」「易しくなった」という評価を超えて、入試制度そのものの変化を如実に映し出しています。特に、2022年度入試から始まった制度変更は、出題の方向性や受験生に求められる内容も変わりました。
この記事では、2022年度以降の平均点データを中心に分析し、制度変更の影響を整理したうえで、最後に2026年度入試の予想概要について詳しく述べていきます
2022年度(2022年3月実施)から、北海道公立高校入試が大きく変わりました。
・「学校裁量問題」の廃止
・配点変更(1教科60点→100点満点)
・試験時間変更(45分→50分)
制度変更を機に、従来重視されてきた知識量や解法パターンの暗記だけでは対応しにくい問題構成へと移行しています。全教科で思考力・判断力・表現力を重視した問題の充実により、基礎知識と応用力をバランスよく問う形となりました。
具体的には、資料やグラフ、文章量の増加、設問文の長文化、「理由を説明しなさい」「考えをまとめなさい」といった記述要求の増加が顕著になりました。
合計点の平均推移
合計点の推移を見ると、制度変更の影響が非常に分かりやすく表れています。
| 国語 | 数学 | 英語 | 社会 | 理科 | 合計 | |
| 2022年度 | 70.3 | 48.1 | 56.1 | 53.5 | 55.3 | 288.3 |
| 2023年度 | 54.2 | 47.7 | 51.1 | 41.5 | 35.6 | 230.2 |
| 2024年度 | 46.3 | 49.0 | 41.1 | 38.3 | 38.6 | 213.3 |
| 2025年度 | 56.9 | 49.1 | 49.1 | 50.0 | 41.1 | 246.2 |
制度変更初年度の2022年度は288.3点と、300点に近い水準で難易度的には易しく、特に国語が簡単でした。
しかし、翌年の2023年度には230.2点まで急落。2024年度には213.3点と、過去十数年で最も低い水準を記録しました。この2年間は制度変更が本格化したことに対し、受験生側の対応が追いついていなかった時期と考えられます。
2025年度は246.2点まで回復していますが、これは出題が易化したということもありますが、受験生が新しい入試の形に適応し始めた結果だと見るのが妥当です。
国語:安定科目から差がつく科目へ
国語は長年、平均点が比較的安定しやすい教科とされてきました。しかし2022年度以降、その位置づけは大きく変わっています。2022年度は70.3点と高水準でしたが、2023年度には54.2点、2024年度には46.3点まで急落しました。2025年度は56.9点とやや回復したものの、以前の水準には戻っていません。
この背景には、設問の性質の変化があります。文章量そのものよりも、設問が抽象化し、「筆者の考えを踏まえて説明する」「理由をまとめて書く」といった、論理的な記述力を問う問題が増えました。そのため、本文内容を理解していても、要点を整理して自分の言葉で表現できなければ得点につながりません。2024年度の平均点の低さは、こうした表現力不足が一気に表面化した結果だといえます。
北海道の報告書には、「北海道の中学生には、自分の意見や考えが、何に基づいているかを明確に表現することに課題がみられる。」と記載されています。

数学:思考力重視が定着した低位安定
数学の平均点は、2022年度以降48~49点前後で推移しています。一見すると大きな変動がなく、安定しているようにも見えますが、これは決して易しい状態ではありません。むしろ、思考力を重視する出題が完全に定着した結果、平均点が低い水準で固定化したと考えるべきです。
制度変更後の数学では、計算量そのものよりも、条件を正確に読み取り、どのような方針で解くかを判断する力が問われています。複数の条件を整理できないまま解き進めると、途中で行き詰まってしまう構成になっています。基礎計算ができるだけでは平均点を超えるのが難しく、論理的に考える習慣の有無が点数差として現れています。
北海道教育委員会の報告書では、「北海道の中学生には、目的に応じて式を変形したり、その意味を読み取ったりして、事柄が成り立つ理由を説明することや、事象を数学的に解釈し、問題解決の方法を数学的に説明することに課題がみられる。」と記載されています。
あと、昨年は初めて作図を直接させる問題がなくなりました。作図を直接させる問題ではなく、作図の過程の考え方を記載させる問題となりました。個人的には、今後もこのような形式になる方が望ましいと思っています。他都道府県の高校入試、私立高校入試、大学入試で共通テストをはじめとして作図を直接させる問題は殆どありませんので。

英語:読む力と処理力が結果を左右
英語は、制度変更後に特に変化が分かりやすい教科です。2022年度は56.1点でしたが、2023年度には51.1点、2024年度には41.1点まで下がりました。2025年度は49.1点と回復していますが、依然として低めの水準です。
平均点低下の最大の要因は、長文読解の負荷増大です。文章量の増加だけでなく、複数の情報を整理しながら答える設問が増え、読むスピードと正確さの両方が求められるようになりました。また、語彙レベルも引き上げられており、単語を文脈の中で理解できないと内容把握が難しくなっています。リスニングを含めた総合的な英語力が、そのまま得点に反映される教科へと変化しています。英語を苦手としている人が、短期間で逆転する秘策は英作文で稼ぐ(減点されない)ことです。英作文対策は案外簡単ですので抜かりなくしましょう。
北海道教育委員会の報告書では、「北海道の中学生には、文章の概要や要点を捉えることや、
基本的な語や文法事項等を活用することに課題がみられる。」と記載されています。

社会:知識依存から資料活用型へ
社会は、2022年度には53.5点でしたが、2023年度には41.5点、2024年度には38.3点まで下がりました。2025年度は50.0点と回復しています。この急激な変動は、出題形式の変化を強く反映しています。
従来の社会は、用語や年代、出来事を覚えていれば対応できる問題が多く見られました。しかし制度変更後は、地図、統計資料、グラフなどを読み取り、その意味を考察する問題が中心となっています。知識を「使う」力が不足していると、正答にたどり着けません。2024年度の低平均点は、暗記中心の学習からの転換が十分に進んでいなかったことを示しています。
北海道教育委員会の報告書では、「北海道の中学生には、文章や図表等に表れている見方や考え方を捉えることや、自分の意見や考えが何に基づいているかを明確に表現することに課題がみられる。」と記載されています。

理科:理解の深さが最も問われる教科
理科は、2022年度の55.3点から、2023年度には35.6点と大きく下がりました。2024年度も38.6点と低水準が続き、2025年度は41.1点とやや回復しています。
理科では、単なる知識問題が減り、実験結果や観察データをもとに考察する設問が増えました。公式や用語を覚えているだけでは対応できず、現象の仕組みを理解しているかどうかが直接点数に表れます。特に、複数の条件を踏まえて結果を説明する問題では、理解の浅さが大きな失点につながっています。
北海道教育委員会の報告書では、「北海道の中学生には、観察、実験の結果を分析して解釈
し、課題に正対した考察を行うことや、結果に影響を与える観察、実験の操作や条件の制御などを
検討することに課題がみられる。」と記載されています。

2026年度・入試の予想(難易度)
まず難易度(合計点の平均点)については、2025年度と同程度と考えています。平均点は250点前後に収まる可能性が高いと考えられます。2024年度ほど極端に低い水準にはならない一方で、2022年度のような280点まで回復することも考えにくいと思っています。
出題内容については、思考力・判断力・表現力を重視する姿勢が引き続き維持されるでしょう。特に、
・複数資料を組み合わせて考えさせる問題
・設問条件が多く、整理力を問う問題
・「なぜそうなるのか」を説明させる記述問題 は、2026年度も継続すると見られます。
教科別の予想は、後日詳しい予想(分野・問題など)を記事にします。
以下はざっくりした概要です。
・国語の難易度は昨年と同程度と予想。記述量そのものが減る可能性はありますが、要求される表現の質は下がらないと予想されます。
・数学の難易度は昨年と同程度(若干易化)と予想。計算量を増やすのではなく、条件理解や途中過程の思考を重視した問題構成が続くでしょう。作図も昨年と同様の形式で出ると考えています。
・英語の難易度は昨年と同程度と予想。英作文が昨年と同様に答えやすい内容になると考えています。文章量や設問数がやや調整される可能性がありますが、語彙力や読解スピードが求められる流れ自体は変わらないと考えられます。
・社会の難易度は昨年と同程度(若干易化)と予想。
・理科の難易度は、やや易化と予想。資料分析型問題が定着する一方で、極端に難解な設問は避けられ、「考えればたどり着ける問題」が増えると予想されます。
その結果、平均点は2025年度と同程度か、わずかに上昇する可能性があります。総合的に見ると、2026年度入試は「制度変更後の安定期」に入りつつある年になるでしょう。ただし、それは決して易しい試験になることを意味しません。思考力型入試が前提となったうえでの安定であり、従来型の暗記中心学習では依然として不利な状況が続きます。
おわりに
北海道公立高校入試は、制度変更の翌年の2023年度を境に明確に質的転換を遂げました。平均点の推移は、その変化を最も正直に示しています。今後重要になるのは、「点数が取れるか」以前に、「考える力を日常的に使っているか」という視点です。
2026年度以降の入試に向けては、知識を覚えるだけでなく、それを使って説明し、判断する学習がますます重要になっていくでしょう。平均点の数字の背後にある入試の意図を読み取り、早い段階から新しい学力観に対応していくことが、今後の受験対策の鍵となります。

