【札幌】高校で落ちこぼれる数学

高校に進学した際、多くの生徒が「中学とのギャップ」に直面し、学習につまずきます。
トップ高(札幌南・北・西・東)の生徒でさえ半数が落ちこぼれると言われているのが数学です。中学で数学を楽々できていた人でも落ちこぼれる生徒は多数います。

その背景には、単なる学習内容の難しさだけでなく、積み上げ型という科目の特性、抽象度の急な上昇、そして学校の数学の進度など、複数の要因が複雑に絡み合っています。生徒は「学校の数学の進度が早すぎる。」ということをよく言いますが、決して早すぎることはありません。関東・関西の私立中高一貫校や予備校では、中学3年で高1の数学を終えています。北海道の高校生は、数学では1年遅れのハンデがあり現役で同等に戦うためには必要最低限の進度だからです。

この記事では、まず多くの生徒が苦しむ高校数学で落ちこぼれが発生するメカニズムを詳細に分析し、その上で効果的な学習戦略を提案します。中学数学で必要な数学力を1としたら、高校1年(数Ⅰ・A)は2倍、高校2年の数学(数II・B)は3倍くらいは必要となります。


なぜ高校数学で落ちこぼれるのか?

高校数学は、中学数学の延長線上にありながら、その構造と要求される思考力が大きく異なります。これが「急にわからなくなる」現象の根本原因です。

① 「積み上げ型」の残酷さと雪崩現象

数学は、典型的な積み上げ型の科目です。基礎となる単元の理解が抜けると、その上の内容がすべて理解不能になるという「雪崩現象」で、それ以降、やる気はあっても授業の内容がわからず、ただただ辛い時間を過ごすことになります。ひたすら板書をノートに写す写経をするか、寝るかになっていきます。

  • 計算を書きすぎ、遅すぎ(展開・因数分解)
    中学数学の計算、とりわけ展開や因数分解が苦手であるとほぼ終了です。展開や因数分解を1行か2行で終わらせるクセをつける練習をせずに、まじめに何行にもわたり書いている生徒は高校1年でスピード不足になり、さらに計算ミスが多発します。また、公式の本質が曖昧なまま高校の内容に入ると、授業速度の速い高校では計算の練習は各自に任せて学校では殆ど教えないことになりますので、計算が苦手、スピードが遅い、ミスが多い生徒は高校1年の前半でついていけなくなります。
  • 「数字」から「文字」になるとできない
    計算(数と式)をどうにか乗り越えても、高校数学Ⅰの文字の絶対値二次関数の最大・最小(軸と領域の移動)、数学Aの確率(C・P)でつまずく生徒が多いです。これらは単なる中学数学の延長ではなく、新たな概念や“文字の発想”を必要とするため、この認知的なギャップについていけないことが大きな理由となります。

② 抽象度の上昇

高校数学では、具体的な数の操作から、抽象的な概念(関数、集合、論理、ベクトルなど)への移行についていかなければなりません。数と式、関数、図形をそれぞれ移行することが求められ、方程式を関数に、図形へと移行、逆に図形を方程式、関数にと移行できることが求められます。

  • 「何をしているのか?」の喪失
    抽象化は、具体的なイメージがないと思考コストが非常に高くなります。「この記号は何を表している?」「なぜこの文字で置く?」という疑問に答えられないまま進むと、次第に、何をしているのかよくわからないという感覚に陥り、学習意欲を失ってしまいます。
  • 公式暗記の限界
    例えば三角比では、図形的意味を理解せず、ただ公式暗記だけに走ると、問題の図や条件が少し変形した途端に対応できなくなります。公式の本質を理解しないと、暗記する項目が増えるだけでなく使いこなせなくなり、高校1年の数学(数Ⅰ・A)でごまかせても、高2で間違いなく落ちこぼれてしまいます。例えば、高1の三角比は高2では三角関数になり、本質を理解していないと、覚えることが増えすぎて公式さえ使いこなせなくなります。

③ 学校の進度と定期テストの特性

多くの高校では定められた進度をこなすため、生徒の理解が追いつかなくても授業は立ち止まることはありません。関東関西の私立中高一貫校は中学3年で高1の数学を終えており、北海道のトップ高といえども数学で1年遅れのハンデがあり、数学の進度は早すぎるということはありません。さらに、定期テストの評価が、本当は数学で落ちこぼれているのに評価が3以上あった場合、誤解を産み一時的な誤魔化しを許容してしまいます。

  • 表面的理解の罠
    定期テストは範囲が限られ「出るところが決まっている」ため、直前の一夜漬けや解法暗記だけでも点数が取れてしまうことがよくあります。この表面的にできているつもりの状態が、本当の理解に到達しないまま次の単元へと進むことを許し、後になってより複雑な応用問題に直面した際に急激に崩れる原因となります。

④ 「数学的センスがない」という思い込み

数学は「能力差が出やすい科目」と誤解されがちですが、本質的には適切な順序で経験を積めば誰でも必ず伸びます。しかし、「自分は数学ができない」という自己評価が固定化されると、悪循環に陥ってしまうため、数学を捨てるしかなくなります。数学を捨てるということは、国公立大学をほぼ諦めることを意味します。

  • 難しい問題に挑戦する意欲が奪われる。
  • 苦手意識から復習を先延ばしにする。
  • その結果、さらに理解が遅れ、できなくなる。

数学で落ちこぼれを防ぐための学習戦略

数学で落ちこぼれないために最も重要なのは、「早期対策」と「着実な積み上げ」です。

前提知識の穴を徹底的につぶす

高校数学につまずく原因の多くは、高校の内容ではなく、小学算数・中学数学の公式の本質的理解漏れにあります。また、高校の数学に入る前に、以下の基礎項目の計算力を必ず固める必要があります。展開・因数分解、連立方程式、平方完成比・割合 ここが曖昧だと、数学Ⅰの二次関数、図形と計量、指数対数など、すべての単元に悪影響を及ぼします。

「例題」でパターン解法の型を習得

数学ができる生徒は、例題の理解を深く行いつつ、何度も反復します。単に解法を暗記するのではなく、プロセスを思考することが鍵となります。

  1. 例題の深掘り
    教科書や参考書の例題1つを「なぜその解法を選ぶのか?」「他にアプローチの方法はないか?」と考えながら解きます。
  2. 知識のネットワーク化
    その上で、例題を反復すること、類題を解くことで、知識が点ではなくネットワークのようにつながり、応用問題にも対応できる「解法の型」が身につきます。

間違いノートで「弱点の見える化」と対策

数学が伸びない生徒は「間違えてもそのまま」にしがちですが、本当の成長は間違えた問題を大切にするかどうかであり、間違いノートを作成してストックしていくことをおすすめします。間違いノートを定期テスト前や模試の試験前に見返すことで、自分の弱点に集中的に対策でき、得点が大幅に安定します。

  • 記録するポイント
    • どこで間違えたか(計算ミス、解法選択のミス、概念理解の不足など)
    • どうすれば防げるか
    • 正しい解法のプロセ

「先取り」学習が効果的

数学は先取り学習が肝要です。先取りをしておくと、授業での理解が劇的に楽になります。

  • 先取りの目的
    「先取り=全部理解する」必要はないです。基礎の基礎の問題は理解して取り組んでおくだけでも十分です。授業が二度目の学習となり、基礎の基礎ができていたら、公式を理解しやすく一度目でぼんやりしていた点がクリアになり、理解が深く定着します。

数学こそ、人に頼る!

数学は「わからないところがどこかわからない」状態に陥りやすい科目です。だからこそ、教師や友人に「この式変形はなぜ?」「この定義は?」と、細部まで質問することが重要です。数学が得意な生徒は、実は周囲に質問しながら理解を深めていることが多いです。

数学は集団授業は適しません。個別の家庭教師などで、オーダーメードで対応していく科目です。
高校で落ちこぼれる最大の原因は、わからないまま次の単元に授業が進んでしまって先生の話している内容が殆どわからなくなることです。特に、数学は積み上げ型の科目であり、1単元の基礎的な理解不足が後のすべてに影響します。基礎的な理解だけは遅れない!できれば先取りしておきましょう。重要なのは、「わからない。遅れてしまった」と気づいたときにすぐ戻って復習する勇気です。正しい方法を知り、小さな行動を積み重ねていくことで数学は克服できます!


問題集・参考書ルート(文系編)

分野教材名特徴
基礎の基礎『ひとつひとつわかりやすく』
(学研)
・先取り用、落ちこぼれたときの最初の1冊。
・はじめての知識を理解するのに最適。
・解説が丁寧で独学しやすい。
・問題数が少ないからこそ、先に進めれる
・回転しやすい。
基礎固め『数学基礎問題精講』
(旺文社)
・例題の解説が丁寧。
・解法の型の習得に役立つ。
・回転しやすい
標準力『黄チャート』or
『青チャート』
(数検出版)
・どちらを使うかは志望大学のレベルで決めるか、
 学校で使っているものを優先
・北大レベルまでは黄チャート
・北大レベル(北大で数学で稼ぎたい)
 以上は青チャート
・網羅性が高く受験まで使える。
・解法パターン習得の決定版。
標準力固め文系数学の良問プラチカ
(河合出版)
・北大を受けるなら、この問題集までは
 回しておきたい