総合型選抜時代に考える北海道・札幌圏の高校受験
「高校は偏差値の順番で選べばよい。」
かつてはそう考えられていました。しかし、その前提は大きく変わろうとしています。
近年、全国の大学では総合型選抜や学校推薦型選抜の拡大が続いており、私立では入学者の約6割も占め、国公立大学でも約3割と急速に増加しています。さらに注目されているのが、これまで筆記試験中心だった一般選抜にも、面接を設ける難関国立大学もあり「人物評価」を取り入れる動きが広がっています。
また、東京大学では新たな学部「College of Design」、東北大学では総合型選抜を軸にした新しい教育プログラム「ゲートウェイカレッジ」など、大学の動きを見ると「未来の大学が求める学生像」が見えてきます。
このように、大学入試の大きな変革は、高校受験にも徐々に影響を与えるにようになってきています。
東京大学・新学部「College of Design」
日本の最高学府である東京大学も新たな挑戦を始めています。一般入試で合格を決めるのではなく、総合型選抜で決める新学部です。
新学部は「College of Design(カレッジ・オブ・デザイン)」という名前です。
ここでいう「デザイン」とは、美術や製品デザインを意味するものではありません。社会が抱える複雑な課題を見つけ、多様な人と協働しながら解決策を生み出していく「デザイン思考」を教育の中心に据えるという考え方です。
気候変動、人口減少、AIの進化、医療や福祉、エネルギー問題など、現代社会の課題は一つの学問分野だけでは解決できません。理系と文系、工学と経済学、医学と情報科学など、異なる専門分野を横断しながら新しい価値を創造する人材が求められています。
こうした時代に必要なのは、「正解を知っている人」ではなく、「問いを立てられる人」です。したがって、従来型の学力試験で選抜するのではなく、面接を通して高校時代にどのような課題意識を持ち、どのような活動に主体的に取り組み、その経験から何を学んだのか。そうした学ぶ姿勢や可能性を評価する選抜することになっています。東京大学が目指しているのは、「知識量だけではなく、学ぶ力そのものを評価する」という方向性であり、そのような学生を育てる教育です。
東北大学は「総合型選抜」を更に拡大
東北大学はさらに大胆な改革を進めています。東北大学は、日本でAO入試・総合型選抜を拡大している大学であり、近いうちに殆どの学生を総合型選抜で選んでいくことを宣言している大学として知られています。
現在では約3割の学生が総合型選抜で入学していますが、大学の追跡調査では、AO入試で入学した学生のGPA(成績評価)が一般選抜の学生を上回る結果も示されています。つまり、「主体性を重視して選抜した学生のほうが、大学入学後によく学んでいる」というデータが得られているのです。
こうした成果を背景に誕生するのが、2027年度開設予定の「ゲートウェイカレッジ」です。このプログラムでは、入学時点で専門分野を決めません。学生は文系・理系の枠を超えて学び、1年次は全寮制で生活します。授業は英語を基本とし、日本人学生と留学生がともに学び、海外留学も必修です。
そして2年間かけて幅広い分野を学んだ後、自分の興味や適性に応じて専門を選択します。従来の「高校3年生で人生を決める」という考え方ではなく、「大学で十分に探究してから専門を決める」という教育へ転換しようとしているのです。
東北大学は将来的に、この教育モデルを大学全体へ広げていく構想も示しています。ここから見えてくるのは、大学が求めているのは「完成された高校生」ではなく、「学び続けることのできる高校生」だということです。
高校受験は「大学受験を見据えて選ぶこと」
こうした大学入試改革を見ていると、高校受験の考え方も変わってきます。
これまでは、「偏差値が高い公立高校」を選ぶことが重視されてきました。もちろん、学力を伸ばせる環境は今後も重要なのは不変です。しかし、それだけでは十分ではありません。
大学が求めているのは、探究活動や課題研究を通して、自ら考え、調べ、まとめ、発表する経験を積んできた生徒です。
そのため、高校選びでは次のような点にも注目したいところです。
・探究活動がカリキュラムに組み込まれているか。
・大学や企業、地域と連携した学習があるか。
・プレゼンテーションやディスカッションの機会が豊富か。
・海外研修や国際交流が充実しているか。
・ICTや情報教育が進んでいるか。
こうした教育環境は、総合型選抜だけでなく、一般選抜でも人物評価を取り入れる大学が増えるなかで、ますます重要になっていくでしょう。
札幌圏の高校を見る新しい視点
北海道・札幌圏にも、こうした教育を積極的に進めている高校があります。
例えば、公立高校なら札幌旭丘高校や札幌啓成高校は、高い進学実績に加えて探究活動や課題研究にも力を入れてSSH(スーパーサイエンスハイスクール)に長年選ばれている高校です。大学や研究機関との連携を通して、自らテーマを設定し、研究成果を発表する経験を積める機会も増えています。
市立札幌開成中等教育学校は、探究型学習を学校教育の中心に据えています。「問いを立てる力」「考え抜く力」「発信する力」を育てる教育は、これからの大学入試との親和性が高いと言えるでしょう。
私立高校では、立命館慶祥高校や札幌日本大学高校などでは、英語教育や探究活動、海外研修などを充実させ、大学での学びにつながる教育を展開しています。
高校にはそれぞれ特色があり、「自分の興味や将来の目標に合った環境かどうか」という視点で学校を見ることが、これまで以上に重要になります。
偏差値だけでは測れない学校の価値
高校受験では、どうしても偏差値を重視してしまいますが、偏差値はあくまで入学時点の学力の目安であり、その高校でどのような経験ができるのかまでは表してくれません。
・従来の大学入試ペーパーテストを重視する学校
・課題研究にじっくり取り組める学校
・大学との共同プロジェクトがある学校
・学校祭を生徒主体で運営する学校
・海外留学や国際交流が盛んな学校
こうした経験は、大学入試だけでなく、その後の大学生活や社会に出てからも大きな財産になります。大学が人物評価を重視するようになった背景には、「社会が求める人材像」が変化していることがあります。AIが知識を瞬時に提供できる時代だからこそ、人間には課題を見つけ、多様な人と協働し、新しい価値を生み出す力が求められているのです。
大学入試改革は、高校選びを変える
大学は「知識を詰め込むだけではなく、自ら学び続ける人を育てたい。」というメッセージを出しています。これから高校受験を迎える中学生や保護者にとって、高校は単なる通過点ではありません。
大学入試改革は、大学だけの話ではありません。高校教育を変え、高校受験の価値観そのものを変える、大きな転換点になろうとしているのです。
どのような環境で学び、どのような経験を積み、どのような力を身に付けるか。その積み重ねが、大学入試だけでなく、社会で活躍する力にもつながっていきます。
だからこそ、これからの高校選びでは偏差値や進学実績だけではなく、「生徒が主体的に学べる環境があるか」「探究や挑戦を応援してくれる学校か」という視点を加えてみる必要があるのではないでしょうか。
