北海道の札幌圏内の中学生にとって、札幌南・札幌北・札幌西・札幌東、そして札幌旭丘といった道内屈指の名門校は憧れの高校であり人気があります。これらの高校はいずれも偏差値がSSランクに位置し、大学受験における実績も高く、特に北海道大学をはじめとした国公立大学への合格者数では常に上位を占めます。
とはいえ、「どの高校もレベルが高いから、どこを選んでも同じ」と考えるのは早計です。各校には歴史、校風、学習環境、部活動、立地、進学実績において独自の特徴があり、自分に最も適した環境を選ぶことが、卒業後の進路達成に大きく影響します。
この記事では進学実績の観点からを重視して、東大・国立医学部、北海道大学・早慶、MARCH・関関同立、道内国公立に分けて解説していきます。
札幌南高校 ― 「全道トップ」の学力と主体性が息づく名門
札幌南高校は、長年にわたり北海道トップクラスの進学校として君臨しています。自主・自立の精神を重んじ、過度な管理指導をしない“南高スタイル”が特徴です。生徒の意識が非常に高く、授業のレベルと速度は道内公立高校では最速級です。北海道大学を単に目指すのではなく、北大を超える東大・京大・一橋大学・東京科学大学・国公立医学部に多数の生徒を送り出しています。
南高と言えば、毎年ユニークな卒業式で知られています。「札幌南高校」では、 卒業生が自分自身の思い思いの衣装に身を包むことで毎年ニュースになるくらいです。京都大学の卒業式とも似たような感じです。北海道大学ではユニークな衣装な方は殆どいません。
◆ こんな生徒に向いている
- 周囲のレベルが高い環境で切磋琢磨したい
- 北大以上の大学(東大・国公立医学部)に行きたい
- 英語・数学は先取りできるくらい余裕がある
英語は入学時までに英検2級、数学は数Iを終わらせていたいところ
私の生徒では入学までに英検準1級、数IIまで終わらせていた子もいます。 - 自主性に任せられている方が伸びるタイプ
- 部活動との両立にも前向きのタイプ
◆ 志望時のポイント
・札幌南高校が向くタイプ ― 「ついていくために努力できるか」が最大のポイント
・「南高に入ってからついていけるか心配です」という声は非常に多いです。しかし実際のところ、札幌南高校は “ついていくために努力できるかどうか” を最も重要視する環境だと言えます。授業進度は速く、特に数学では実質的に半数ほどの生徒が一度はつまずきます。しかし、それは決して悲観する必要はありません。所詮は高校数学の範囲であり、南高に合格する学力がある時点で、数Ⅰ・数Ⅱレベルであれば努力次第で必ず乗り越えられる内容です。
大切なのは、 落ちこぼれたときにどう行動するか という点です。つまずいた瞬間に「もう無理だ」と投げ出すのではなく、短期間でもう一度基礎からやり直し、理解を取り戻そうと動けるかが勝負になります。
さらに付け加えると、南高の場合、いわゆる“深海魚”と呼ばれる成績層に落ちてしまったとしても、学校側が過度にフォローしてくれることはほとんどありません。自主性を重んじる校風ですので、手厚い補習や個別指導を期待するとギャップを感じる可能性があります。
落ち込みそうな局面でも、自ら立て直す姿勢が求められる という点は理解しておきたいポイントです。
①不安を“原動力”に変えられる粘り強いタイプ
- 不安を抱えながらも努力に変えられる
- できない自分を悲観せず改善の行動に移せる
- プレッシャーの中でむしろやる気が出る
こうしたタイプのほうが南高で伸びやすいです。逆に、不安や迷いに気持ちが負けてしまうタイプ、気持ちの切り替えが苦手なタイプにとっては、南高のスピードや自由度の高さが負担になる可能性があります。
②苦手を切り捨てる“選択と集中”型のタイプ
粘り強いタイプの一方で、あっさりと諦めるタイプも実は向きます。南高と聞くと「全科目を完璧にこなす内申満点・完璧型ばかり」というイメージを持つ人もいますが、実際には 科目を戦略的に絞るタイプも向きます。
- 数学が苦手なら、早めに理系を諦めて文系に振り切る
- 苦手科目に時間を奪われる前に、得意科目で勝負する方針を決める
- 自分の特性を冷静に分析し、戦える場所に集中する
こうした「選択と集中」ができる生徒は、南高での成績は下位でも、入試では上位層に匹敵する大学に合格しやすいです。南高は「全方位型の万能タイプ」だけではなく、自己分析と戦略性を持つ生徒が強いタイプの生徒もいる学校でもあります。
自分の特性を理解し、「どこで戦うか」を決められるかが鍵です。南高に入学すると、多くの生徒がまず「周りのレベルの高さ」に驚きます。中学では常にトップだった生徒の半分が、南高では真ん中以下に位置することになります。要は、私は南高の中では落ちこぼれと感じる生徒がたくさんいます。そこで大切になるのは、自分の強み・弱みを正しく理解し、“自分の戦うべき場所”を定める力です。
- 努力で挽回できるタイプ
- 苦手を早めに切り捨てて得意で勝負するタイプ
- 不安をエネルギーに変えて行動できるタイプ
こうした“自分のスタイル”を確立できれば、南高の環境は非常に力強い味方になります。
しかし、
- 流されやすい
- 苦手科目を切り捨てる勇気もないタイプ
- プライドが邪魔で方向転換できない
といったタイプは、南高の自主性の高さと授業スピードについていけず、いわゆる深海魚層に落ち込んだまま抜け出せないリスクがあります。
札幌南高校は確かにハイレベルな進学校ですが、「頭の良さだけ」で勝負する学校ではありません。努力の方向を考え、必要なときに軌道修正し、時に大胆に選択する主体性を持つ生徒が最も力を発揮できる学校です。そして、深海魚になったときに救い上げてくれる環境ではないからこそ、自分の力で立て直す強さが求められます。
北大に行きたいなら南高はオーバースペックとも言えます。
札幌北高校 ― 落ち着いた校風と堅実な北大実績
札幌北高校は、歴史の長い伝統校であり、落ち着いた学習環境と真面目な生徒が多いことで知られています。南高と比較すると、南高は私服であり北高は制服からはじめ、学祭や卒業式でもやや穏やかで、堅実な学力向上が期待できる環境が整っています。北大への合格者数も毎年安定して多く、特に理系の比率が高い傾向にあります。
◆ こんな生徒に向いている
- 北海道大学に行きたい
- 自由放任よりは決められている環境の方が伸びるタイプ
- コツコツ型で努力を積み重ねていくタイプ(内申がAランクの上位)
- 英語と数学どちらとも得意(入試裁量で2倍換算)
◆ 志望時のポイント
北高は、高校入試において英語と数学が2倍換算されますので、英語と数学どちらとも得意な方が向く高校です。どちらかが苦手なら厳しい戦いになります。また、学校裁量で内申1:本番9の枠があり、南高や西高は内申0:本番10と比べると、内申がAランクの上位層にとっては有利になります。
北大に行きたいだけであれば、札幌南高校はある意味 オーバースペックです。南高は東大・医学部など全国レベルの競争を視野に入れている層が多く、そのレベルの授業や対策となりハイレベルになります。北大の入試問題は標準的な問題が多く、ハイレベルな問題は殆ど出ないので、標準問題で合否が分かれます。
つまり、北大合格を目指すなら南高ではなく北高こそがベストな環境になります。適切な学習環境と自分に合う校風のもとで努力を続ければ、十分に北大を狙えます。むしろ、南高の最優秀者層との競争やスピード感が負担になるタイプにとっては、北高のほうが安定して実力を発揮できることもあります。北大を目標にしている生徒にとっては、「北大に届くペースを確実に維持できる環境」 が最も重要であり、北高こそ最適な高校と言えます。
札幌西高校 ― 自由と活気が両立する環境
札幌西高校は、活気あふれる生徒文化と自由度の高さで知られています。南高と同様、制服がなく私服です。学校祭や行事の盛り上がりは道内トップレベルで、勉強も遊びも全力という雰囲気が強いです。大学進学実績も安定しており、文武両道をゆく学校です。
西高の魅力を一言で表すと、「自分のやりたいことに全力で打ち込める高校」という点です。伝統的に自由な校風で、生徒の主体性を大切にする文化が強く、行事や委員会、部活動、そして学習においても、生徒が自ら動き、学校を作り上げていく空気があります。行事への熱量が高いだけでなく、企画から運営までを生徒主体で進めるため、一人ひとりの個性や表現力が育ちやすい環境です。
◆ こんな生徒に向いている
- 行事や文化活動が大好きで、高校生活を楽しみたい
- 自由な雰囲気の中で自主的に学びたい
- 北大でなくても、道内国公立・関東関西の私立大学でもよい
- 浪人してもよい(約3割と南高・北高と比べると浪人率は高い)
◆ 志望時のポイント
「楽しいだけでは?」と思うかもしれませんが、札幌西高校には勉強面でもしっかり取り組む生徒が多いです。ただし、自由な校風ゆえに 自主性が必須 となり、周囲に流されやすいタイプは注意が必要です。行事の熱量に巻き込まれ、気が付くと学力が下降しているというケースも少なくありません。
札幌西高校の1学年は約300名ですが、北大に現役で合格できるのはおよそ60名ほどで、実は 上位2割しか北大に届かない厳しい競争 になります。また、小樽商科大学や室蘭工業大学といった道内国公立、あるいは道外の国公立大学への現役合格者は約100名程度で、全体の半数ほどにとどまります。約2割の生徒は北海学園大学などの道内私立大学、または道外の私立大学に進学し、さらに約3割は浪人という進路になります。自由で楽しい校風とは裏腹に、進学実績は数字だけ見れば非常にシビアです。
入学時点では、札幌西高校に合格できる学力層は偏差値的に MARCH・関関同立が合格できる と言われる層です。しかし、西高3年間の学力推移をざっくりと分類すると、次のような傾向が見えてきます。
成績上位層(1/3)
→ 北大などMARCH・関関同立以上の大学に進学する傾向
成績中上位層(半分以上)
→ MARCH・関関同立と同等の国公立大学・私立大学に進学する傾向
成績中下位層(半分以下)
→ MARCH・関関同立より下位の国公立大学・私立大学に進学する傾向
このように、西高では「入学時の偏差値よりも、入学後の過ごし方で進路が大きく開く」学校です。自由な校風だからこそ、主体的に学習時間を確保し、行事とのバランスを取れるかが非常に重要になります。行事にも全力、勉強にも全力で取り組めるタイプにとっては最高の環境ですが、学習管理が苦手なタイプにとっては成績が伸び悩みやすい環境にもなり得ます。
札幌東高校 ― 落ち着いた堅実な環境
札幌東高校は、学習への姿勢はまじめで、実直な雰囲気な学校と言われています。文武両道の代名詞とも言える学校で、部活動も盛んであり進学実績も安定しており、北大にも多くの合格者を出しています。
◆ こんな生徒に向いている
- 学習面では真面目に取り組むタイプ(内申がAランク)
- 英語、数学どちらかが苦手(北高は難しいため)
- 適度に管理された環境が向くタイプ
◆ 志望時のポイント
学校裁量で内申2:本番8の枠があり、北高は内申1:本番9、西高は内申0:本番10と比べると、内申がAランク層にとっては有利になります。
札幌旭丘高校 ― “単位制”・“データサイエンス”・女子に人気
札幌旭丘高校は、北海道内でも数少ない進学重視型単位制を公立高校として採用しています。単位制のため、大学のような感覚で自分で時間割を組むことが可能です。1・2年次である程度の共通科目を履修し、3年次には進路に応じてより柔軟に科目を選択できます。北大進学者も毎年約30人おり、堅実に学べる環境が整っています。男女比が、女子生徒の割合が高い傾向も特徴です。
自主自立を基本理念としており、生徒が自ら考え、行動する力が求められます。苦手分野を徹底的に勉強するなど、自分のペースや興味に合わせて学習を進める自由度が高いのが最大の魅力です。
生徒が主体的に行動し、個性を尊重する風土があり、ガオカ生と先生の仲の良さも評判です。
校舎はきれいで、個人ロッカーや生徒ラウンジなど、自習しやすい環境が整っています。職員室も開放的な設計で、先生に質問しやすい雰囲気があります。単位制の自由度が、逆に「何をしたらいいかわからない」という状況を生む可能性もあります。円山公園駅からは徒歩で行けなくもない微妙な距離です(最後に坂があります)。
◆ こんな生徒に向いている
- 行事や文化活動が大好きで、高校生活を楽しみたい
- 自由な雰囲気の中で自主的に学びたい
- 自分で計画を立て、実行する自己管理タイプ(コツコツ努力型)
- 内申が高いタイプ(Aランク)だが実力は内申を下回る
◆ 志望時のポイント
札幌の上位高校の中では、高校生活も“等身大で頑張れる”環境が揃っている人気の高校です。学校生活の満足度も高い高校です。また、旭丘高校にはデータサイエンス科(DS科)は2022年4月に開設された革新的な学科です。1年目の進学実績も北大や慶應SFCに2名輩出するなど、しっかりと進学実績を出しています。
・人気のある学校で高倍率は確実な高校です
・公立高校ですが、推薦入試もあります。
高倍率のためAランクでも落ちる生徒はいます。
・普通科が不合格でもDS科に回し合格になる可能性もあります。
・DSは数学、理科が得意(数学・理科は2倍換算、英語1.5倍換算)
