【北海道】私立高校無償化をわかりやすく

最近話題になっている「私立高校無償化」ですが、実際にはすべての費用が無料になるわけではありません。この制度は、私立高校の授業料の一部を国が補助する制度で、正式名称は「高等学校等就学支援金制度」といいます。

「無償化」とは言っても、対象となるのは授業料の補助に限られており、入学金や施設費などのその他の費用は別途必要です。また、現行の制度では授業料を一旦支払う必要があり、半年ぐらい経ってから返金される仕組みですので注意が必要です。

2026年度からは、私立全日制は45万7000円、私立通信制は33万7000円となる予定です。わかりやすく月ベースでいうと、私立全日制なら約月3万8000円までの授業料が補助(予定)されるということです。※2025年11月13日現在、決定事項ではないため留意してください。

つまり、無償化といっても、授業料の一部(月額 約3万8,000円)の補助であるため完全無償化でもなく、前払いして半年後に還付される制度であることの理解が必要です。

「高校無償化」は“完全無料”ではない

「高校無償化」という言葉から、高校にかかるすべての費用が無料になるわけではないことに注意が必要です。この制度で補助の対象となるのは、あくまでも授業料のみです。

補助は授業料のみ・上限額あり(授業料以外は対象外)

私立高校の場合、授業料のほかに高額な入学金、施設費、修学旅行積立金などの様々な諸費用が別途かかります。公立高校と比べて高額になりますが、これらの費用は制度の対象外です。

・入学金は札幌市内の私立高校では約25万円前後、札幌光星高校30万円、立命館慶祥高校は35万円と高額です。札幌以外の地域の入学金は20万円前後です。

・施設費などは、月1万円〜3万円くらいかかります。

・修学旅行等の積立金は、月1万円〜2万円くらいかかります。

また、国から支給される授業料補助には上限(年額 45万7,000 円)があり、私立高校などで、実際の授業料がこの上限を上回る場合は、その差額は保護者の負担となります。
北海道の私立高校の多くは授業料は補助の金額と同程度で持ち出しが殆どないですが、例えば立命館慶祥高校は授業料は年額約70万円であり、年額約24万円の差額の授業料は支払う必要があります。

公立高校についても、授業料自体は原則無料ですが、制服代や教材費、修学旅行積立金など、多岐にわたる費用は自己負担が必要です。

したがって、「無償化=完全無料」と誤解しないよう、授業料補助制度であるという点を正しく理解することが大切です。

授業料は一旦支払う必要あり→補助金の支給(返金)は夏以降

私立高校の授業料の支払い時期は高校によって異なりますが、合格手続き時、入学時、学期始めに授業料を保護者が全額立て替える(前払いする)必要があります。
※2025年度までは、就学支援金は保護者の口座に直接振り込まれるのではなく、まずは学校側にまとめて支給され、学校側から返金される流れでした。2026年度以降、どのような流れになるかは現状定まっていません。

私立高校無償化制度による授業料の返金は、入学前にいったん支払った授業料を、学校が国から支援金を受け取ったあと、学校を経由して保護者へ返金する形で行われています。一般的には、夏以降に返金されるケースが多いようです。ただし、学校によって時期が異なるため、年度末(3月頃)にまとめて返金される場合もあります。この流れも今後変更になる可能性もありますが定まっていません。

そのため、入学時点では授業料を一時的に立て替える必要があることを理解し、学校からの案内をしっかり確認しておくことが大切です。なお、授業料の負担が困難な場合は、徴収が猶予される場合がありますので、詳しくは、在学中又は入学予定の学校へお問い合わせください。

(ご参考)高校無償化の背景・目的

「高校無償化」が導入・拡大された背景には、社会の変化(少子化対策)と教育格差への懸念が考えられています。高校無償化制度は、意欲あるすべての高校生が安心して学べる環境を整え、家庭の教育費の負担を軽くし、教育の機会を平等にすることを目的として、2010年に始まりました。

当初は、一定の条件を満たせば公立高校の授業料が実質無償になりましたが、私立高校の授業料は高額なため、支援金では一部しかまかなえない状況でした。その後、2017年の国の調査では、「教育にお金がかかりすぎる」ことが子どもを持たない理由の第1位とされ、こうした背景も踏まえて少子化対策の一環として制度の見直しが検討されました。2000年代後半から我が国では「教育の格差」が社会問題として注目されるようになりました。経済的に厳しい家庭は教育費を理由に公立高校を選ばざるを得ないことがいいのか?その結果、進学や就職の機会にも差が生まれているのでは?ということが議論されはじめました。また、地方では少子化の影響もあり公立高校の統廃合が進み、通学距離の問題などから、地域によっては私立高校が実質的に唯一の選択肢というケースも出てきました。

こうした状況を踏まえ、「家庭の経済状況によって進学の自由が制限されるのは不公平ではないか」という声が高まり、「教育機会の均等」を保障し、生徒が経済状況に関わらず自由に学校を選択できる環境を整えることを主な目的として、大阪府や東京都が私立高校無償化を拡大したこともあり、政府も私立高校の無償化が拡大されました。

2020年4月から私立高校にも、公立高校と同様の実質無償化がはじまり、2026年度からは世帯年収による支援対象の制限が撤廃され、私立高校などへの支援金額がさらに引き上げられる予定です。

なお、同じ目的のもと、未就学児の幼児教育(幼稚園や保育所など)も2019年から実質無償化されています。また、大学についても2025年度から、子どもが3人以上いる世帯であれば、世帯年収にかかわらず授業料や入学金の一定額までが無償化されています。

北海道における私立高校の主な対象高は、北海学園札幌高校、藤女子高校、北海道科学大学高校、札幌大谷高校、札幌静修高校、札幌北斗高校、札幌光星高校、札幌山の手高校、札幌新陽高校、東海大学付属札幌高校、札幌創成高校、札幌日本大学高校、日本航空高校北海道、函館大学付属有斗高校、函館大学付属柏稜高校、遺愛女子高校、函館白百合学園高校、函館大谷高校、清尚学院高校、函館大妻高校、函館ラ・サール高校、苫小牧中央高校、駒沢大学附属苫小牧高校、北海道栄高校、旭川志峯高校、旭川実業高校、旭川龍谷高校、旭川藤星高校、旭川明成高校、北見藤高校、武修館高校、北照高校、小樽明峰高校、海星学院高校、帯広大谷高校、白樺学園高校、帯広北高校、北海高校、北星学園大学附属高校、立命館慶祥高校、札幌第一高校、北海道文教大学附属高校、札幌龍谷学園高校、酪農学園大学附属とわの森三愛高校、小樽双葉高校、北星学園女子高校、北海道大谷室蘭高校、稚内大谷高校などです。掲載していない高校でも全日制や通信制であれば対象になると思われますので、各校にお問い合わせください。